かろうじて、アラマタヒロシとアラマキヨシオの区別はつく程度の薄い知識しか持たない私ですが、『神聖代』は記憶に残っています。
カフカっぽい無個性な主人公が、エッシャーやボッシュの絵っぽい不条理感に満ちた惑星群を経て、銀河系のかなたをめざす話。派手な活劇があるわけではありませんが、心地よい難解さを感じたものです。
後に荒巻義雄が『紺碧の艦隊』をはじめとする架空戦記シリーズものを大ヒットさせた時は、作風の違いにびっくりしました。架空戦記全般を安直だとか通俗だとかいうつもりはありませんが(私も『浮城物語』を架空戦記として読む発表をしたことがあるのです)、少なくとも『神聖代』ほどの心地よい読後感は得られませんでした。