私が知っている唯一のウクライナ文芸、『イリヤ・ムウロメツ』。
筒井康隆が文章、手塚治虫が絵を担当した講談社文庫版を愛読したものです。
敵国や化けものからキエフの都を守り続けて来た、最強の勇士イリヤ・ムウロメツ。
そのイリヤがある時、一時の怒りからウラジーミル公に背き、宮殿に矢を射かけます。勇士としては三番手ぐらいの実力者、礼儀正しいドブルイニャ・ニキーティチが仲介に立ち、ウラジーミル公はイリヤらと和解の酒盛りを開くのでした。
……短絡的に世界情勢に結びつけるつもりはありません。戦場の勇士は多くても、礼儀正しい調停者は少ない、と憂うばかりです。