これは私の新発見ではなく、高橋誠一郎氏の公式ホームページで知りました。
「僕は無智だから反省なぞしない」――フクシマ後の原発再稼働と知識人・小林秀雄 | 高橋誠一郎 公式ホームページ (stakaha.com)
このたび、埴谷雄高と大岡昇平の対談が入手できましたので、少し長めに引用してみます。
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埴谷 「新日本文学」では小林秀雄も火野葦平も入れた戦争責任者のリストをつくったよ。
大岡 小林秀雄で思い出したけれども、「近代文学」が小林を呼んでやった座談会のときのあとで物議をかもした台詞があるだろう。自分は黙って事件に処した、利口なやつはたんと後悔すればいい、というやつ。
埴谷 ああ、それは、小林さんは座談会のときは言ってなくて、あとで書いたものなんだよ。だいたい小林さんは座談会の原稿は全部書き直して、はじめの言葉は一つもないくらいだよ。
それをみてわれわれも悪くなってね、座談会というのはこういうふうにするもんだときめて、とにかくしゃべっておいて、あとで直すというふうになった。
大岡 おれは小林秀雄の直弟子だから、おれもむろんモロに直す。しゃべって一つのアイデアを出しておいて、それを手を入れるときに広げたりするわけだから、雑誌のほうだって、そのほうがいいと思うよ。考えを深めるわけだからね。ただ、あとでほかの人がいってることを先にとるのはいけないね。
埴谷 そう、とったり、噛み合わなかったら悪いんだよ。
大岡 しかし小林の「黙って事件に処した」はあまりあてにならないな。黙って事件に処してはいないよ、あいつ(笑)。
埴谷 そりゃ、いろいろ書いてるよ。
大岡 論文は「無常といふ事」なのだが、座談会では日米けんかしたらむろん勝つさ、なんていっている。研究者が掘り出してくるからな。
『大岡昇平全集 別巻』 二一一~二二二頁
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小林秀雄の名文句(とされる発言)はすべて嘘だったわけです。「研究者が掘り出す」には時間がかかってしまいましたが。
小林の改竄ぶりはいつものことですが、それを見習って「われわれも悪くなってね」だの「おれもむろんモロに直す」だのという埴谷・大岡の態度も、まともとは思えません。受け継がれる改竄隠蔽体質というべきでしょう。