核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

明治SFの非殺傷兵器(矢野龍渓『報知異聞 浮城物語』(1890))

 明治23年の日本にも、文学作品を通して非殺傷兵器を考える思想が存在した、貴重な一例です。
 以下は、矢野龍渓(やのりゅうけい)の『報知異聞 浮城物語』というSFの一部です。
 大日本帝国からの独立を夢見る海上国家「海王丸」の面々。それぞれ軍事や科学の専門家ぞろいなのですが、中に機械と電気の専門家がいまして。以下、第十一回「新発明」より要約。
 彼の発明の一つは電気階子(はしご)。船体のはしごに電流を流し、侵入者を感電卒倒させる非殺傷兵器です。豪胆な水兵に実験してもらったところ、ずーんと痺れて海に落ちまして。幸いけがはなかったらしく、勇気をたたえられて賞金をもらいました。
 残念ながら、次に出てくる「電気棒」は殺人兵器でして、羊で実験したら一撃で絶息してしまいました。海王丸の数々の秘密兵器のなかでは、「電気階子」が唯一の非殺傷兵器です。
 ヴェルヌからの拝借っぽい気もしますが、第二十四回「談判」ではバタビヤ市の警部長らを傷つけずに撃退するなど、役に立ってはいます。未開人ではなく自称文明人の植民者相手に非殺傷兵器を使わせたあたり、ヴェルヌとは違う龍渓の意図があったのではないでしょうか。