以前、『浮城物語』で発表した時にも参考にさせていただいたことがある、表世晩氏の学位論文です。
従来の説にあるように、『経国美談』は立憲改進党のイデオロギー的宣伝なのかと、物語がスパルタ王政制に対するセーベ共和制の勝利になっていること、過激な自由党左派も同作品を愛読していたこと、日本のみならず韓国や中国でも読まれていたことを例に挙げて反論なさっています(大意。二二ページより)。
まさに同感で、その後に展開される、俯瞰的な視点をめぐる議論も説得力があります。
こうした論文が十七年以上前に書かれている以上、よっぽどの新機軸を打ち出さなければ経国美談論にはならないわけですが、どうしたものでしょうか。
諸家があまり引用しない、「東京をハンブルヒのごとき自由都市に計画」でも使いましょうか。いずれ『龍渓矢野文雄君伝』から紹介しますが、龍渓が立憲改進党の枠におさまらない人物だったことを示す一例です。