核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

アリストパネス『女の議会』(『ギリシア喜劇全集4』(岩波書店 二〇〇九)より)

 男装した女性たちが大挙して民会を乗っ取り、合法的に女性の支配を定めてしまう物語。

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 次のことだけを考え、ただ支配させてみようではないか。
 すなわち、第一に女性たちは母親であるがゆえに、兵士たちの安全を切望するという。第二に、食糧を生みの母親ほど速やかに補充してやる者などいようか。
 (『ギリシア喜劇全集4』(岩波書店 二〇〇九) 一八ページ)
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 ……なんてとこだけを読むと、うんうんフェミニズムしてるじゃないかとも思えるわけですが。
 プラクサゴラー(女主人公)が政権を握った後の、財産共有政策の段になると、少し怪しくなります。 
 私有財産がなくなれば裁判もなくなる、犯罪も賭けごともなくなるというのです、が。その共有財産は誰が生み出すのか。

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 クレメース 土地を耕すのは誰?
 プラクサゴラー 奴隷たち。
 (四九ページ)
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 結局、貧乏人や女がしていた仕事を奴隷に押し付けるだけか、と失望感が襲います。正直ではありますが。
 アリストパネスの最後の作品『プルートス』(福の神)も、公平な社会の実現をテーマにしているわけですが、しわよせを受ける人が出ることも描かれています。
 解説によれば『女の議会』はしばしばプラトンの『国家』と比較されているようですが、想像される問題点を問題点のまま提示しているぶんだけ誠実ではあると思います。しかし、アリストパネスの中ではあまり好きになれない作品ではあります。