無謀な作戦、兵士の命をかえりみない爆破命令のために中隊のほとんどが戦死し、生きのこった三名の兵士が軍司令官(ムダ口ですね。仮名でしたが)の暗殺をくわだてるも失敗、憲兵に銃殺されるという筋です。
戦時下にそうした形で抵抗をくわだてるというのはありそうなことでもあるし、私も読んでいる間は兵士たちにどっぷり感情移入していましたが、しかし、そうした抵抗を倫理的に認めるわけにはいきません。
残酷な言い方になりますが、戦場にかり出されてからの抵抗では遅すぎるのです。
平和な時代、議会や選挙が機能しているうちにこそ、軍国主義への抵抗は可能なのです。
木下尚江や村井弦斎の、戦時下での痛切な反戦文学を否定するわけではありませんが、決壊してしまった堤防を素手で止めるような悲壮感は否めません。堤防が決壊する前ならば、もう少し安いコストでなんとかなったのでは。
……今回は、反論も多いかもしれません。覚悟しています。