『落葉の掃き寄せ 一九四六年憲法 その拘束』(文藝春秋 一九八八)より。
六〇年安保と、その当時の大江健三郎を批判する文脈の中で。
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あの当時も、いまも、私が政治の公理を、「やつは敵だ。敵は殺せ」という箴言に要約されるものとは考えていないということである。
私にとって、政治は、「殺す」ものではなくて「生かす」ものでなければならなかった。
(64ページ)
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……江藤淳によれば、大江健三郎の一連の政治的発言こそ、「やつは敵だ。敵は殺せ」という態度の典型なんだそうで。「大躍進」(という名の飢餓)のただ中にあった中国から、「日本人民の英雄的闘争を激励する」なんて北京放送を大江らが流していた(上掲書62ページ)ことを思えば、そう言われても仕方がありません。
江藤自身はどうなんだという問いは、江藤をもっとよく知るまでは保留することにします。私も、政治とは「やつは敵だ。敵は殺せ」ではあってはならないという意見に賛同します。