核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

『暴力論』のソレル

 ラクラウ+ムフの『民主主義の革命』によれば、ソレルの思想的展開は三段階ほどに分かれるんだそうですが、少しはしょって第三段階、『暴力論』(一九〇八)の時期、正統派→修正主義を経て独自の思想を確立したソレルについての箇所を引用します。

 

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 プロレタリアートは、ソレルの眼からすれば、衰退しつつあるブルジョア文明を構築し直す英雄的未来の可能性をもった唯一の階級である。そうした階級のアイデンティティーが失われるということは、その階級から活力が奪われるということである。そのときソレルは、デモクラシーの公然たる敵となる。彼はデモクラシーを、プロレタリアートの主体位置と分断をもたらした主犯として理解するようになる。

 『民主主義の革命』一〇九ページ

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 ……デモクラシーは敵なんだそうです。その後もソレルは、「神話」「偉大さへの傾向」「反ー自然」といった、あんまりマルクスっぽくない用語を並べます。どっちかっていうとファ

 

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 彼の追従者のなかには、労働者階級の革命的回復の希望を捨て、ブルジョア的退廃との闘争を保証してくれる他の代用神話の探求に身を捧げた者もいたほどである。周知のとおり、彼らはそれをナショナリズムに見出した。このような経路を通って、ソレルの知的遺産の一部ファシズムの台頭に貢献したのである。

 『民主主義の革命』一一二ページ

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 ……やっぱりファシズムに至ったか。本文では「一部」に傍点が打ってありまして、あくまでもファシズムはソレルの影響の一部なんですよと強調し、他の方向(グラムシとかボルシェヴィズムとか)にも向かいうるとしていますが……余計まずいでしょ。

 ファシズムとボルシェヴィズムの両方に暴力礼賛の思想を与えちゃ。

 これにて『民主主義革命』の「1 ヘゲモニー―概念の系譜学」はおしまい。次回は反省会でも。