核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

話はソレルが

 実は私は、ソレルの『暴力論』(上下巻 岩波文庫)を持ってまして。

 暴力への哲学的考察を期待して、三省堂本店の古書コーナーで300円で買ったのですが、内容は期待はずれでした。

 上からの力(ブルジョア・フォルス)と下からの力(プロレタリア・ヴィオランス)を区別し、プロレタリアによるヴィオランス(暴力)の倫理性をえんえんと説くというものです。日本のプロレタリア作家の黒島伝治だって、その程度のことは言っています。

 そんなソレルを「このように深い、倫理的で真に革命的な構想」(岩波文庫五二ページ)と呼ぶ、ベンヤミンの『暴力批判論』(これも持っています)もどうかと思います。法を措定する神話的暴力に、法を破壊する神的暴力を対置させていますが、要はソレルの二分法(ブルジョアの暴力は悪い暴力、プロレタリアの暴力はいい暴力)と変わりません。メシアニズムに毒された西洋人はともかく、日本人がベンヤミンの『暴力批判論』をありがたがる理由はないように思うのです。