核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

黒島伝治と小川未明 あるいは利己的な平和主義と利他的な平和主義

 敵に対する倫理を持ち合わせているかどうかで、平和主義は二分される、と考えています。

 たびたび悪い例として出しますが、黒島伝治の作品および「反戦文学論」は、敵(彼の場合は上官やブルジョワ)に対する倫理を持ち合わせない平和主義、利己的な平和主義の典型といえます。

 対して小川未明の「野薔薇」は、短編童話という制約はあるものの、敵(老少佐にとっての青年兵)に対する倫理感を描いている点で特筆すべき作品です。実際の戦争で敵同士が一対一になることはまずなく(リアリティでは、黒島のほうが圧倒的に上です)、利他的な平和主義がありうるという可能性をほのめかしています。