核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

福田恆存の、翻訳と創作の落差

 福田恆存(ふくだ つねあり)という名前を、シェイクスピア劇や、ヘミングウェイ老人と海』の翻訳で知ったという方も多いと思います。実のところ、私も最初に知ったのは、新潮文庫版『老人と海』とその解説ででした。

 それらの堂々たる名文を読んで、すごい人かも知れないと勘違いした方もいるかも知れません(またですが私もでした。過去には)。違います。それらが名文に見えるのは、福田の訳文すら通して光る、シェイクスピアヘミングウェイの原作の力のせいです。

 その証拠に、福田恆存自身が書いた自称喜劇は、どれも少しも笑いやユーモア感をもたらしませんでした。独善的な主人公が威張り散らすだけの代物です。あれで笑えるのは福田本人だけでしょう。役者さんたちを心から気の毒に思います。

 もっとひどいのは史劇『明智光秀』で、シェイクスピアの名作『マクベス』を、明智光秀の信長殺しにひき写しただけの、これはやばいだろという、盗作すれすれの劇です。

 たぶん福田はシェイクスピアなどを訳しているうちに、自分がシェイクスピアなみの偉大な劇作家だと勘違いしてしまったのでしょう。思い上がりもいいところです。