どうも自力で村井弦斎『桑の弓』を読む気力が出ないので、他力を借りることにします。
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シベリアに日本とロシアの緩衝地帯となる独立国を築くという『桑の弓』(明治三十一)……。
ちなみに『桑の弓』での「緩衝地帯」建設は、日本人とロシア人の結婚、混血を前提としている。主人公は当初、ロシアに渡って、その国力を削ぐために革命派を支援するのだが、戦闘ではなく愛情によって侵略に備えようというのだった。ところで、ここには東京外語学校魯語科時代の弦斎の思い出が投影されている節がある。父は主人公に、「おまえにロシア語を学ばせたのは、日本だけでなく周辺諸国の脅威であるロシアに対抗させるためだ」と語るのだが、これは二葉亭四迷がロシア語を学んだ理由と同じだ。
(上掲書 一三七~一三八ページ)
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実際、弦斎がロシア語を学んだのも、ロシアへの好意というよりは警戒心のあらわれなのでしょう。父、村井清ともども。