核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

核通、『平家物語』を読む

 前から講談社文庫版、高橋貞一校注『平家物語』上下巻を持っていたのですが、このたび必要あって冒頭から通読し、その面白さを再認識しました。

 軍記ものにこういうことをいうのは不謹慎かも知れませんが、すごく「笑える」のです。作中人物たちの一挙一動が。

 「カルチャーギャップはギャグの宝庫」だと、前々回に書きました。村井弦斎『深山の美人』はその設定を生かし切れてませんでしたが、『平家物語』は違います。源氏と平家、武士と公家のカルチャーギャップが、私の笑いのツボを刺激してくれます。

 その「笑いのツボ」に近い表現も原典にありまして。鹿谷の山荘で、後白河法皇とその一味が、平家を倒す秘密会議を開く場面。ばれたらどうしようとびくびくしながら。

 瓶子(へいじ 酒を入れる容器)が倒れる音で、法皇らははっと我に返ります。そこで大納言成親はとっさに「平氏(へいじ 平家のこと)が倒れました」と返します。

 

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 法皇もゑつぼに入らせおはしまし、「者ども参つて猿楽仕れ」と仰せければ、平判官康頼つと参つて、「ああ余りに平氏の多う候に、もて酔ひて候」と申す。俊寛僧都、「さてそれをば、如何仕るべきやらん」。西光法師、「唯首を取るには如かじ」とて、瓶子の首を取つてぞ入りにける。

 (講談社文庫版『平家物語』上巻 九一~九二頁)

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 「ヘイジが倒れた」という、冷静に考えたら全然面白くないギャグが、パニック状態にあった法皇らのツボに入っちゃいまして。「ヘイジがいっぱいいるぞ~」「首をとれ~」と馬鹿騒ぎになるわけです。んなことやってるから露見するわけですが。

 ホラー映画でよく描写される心理状態ですね。ゾンビの群れから逃げて、ようやく交番に逃げ込んだヒロインが、「あはは、あはははは!」とか爆笑するシーン。おまわりさんもゾンビだったまでがパターンですが。