講談社文庫版『平家物語』下巻、巻第八の登場なので、だいぶ遅い登場ではありますが。この緒方惟義(おがた これよし)という人物、九州に逃げてきた平家を追い出し、同じく九州に逃げてきた源義経には協力する(でも海難ではぐれる)、あまり知られていない『平家物語』のキーパーソンです。
そして彼の初登場場面では、
「かの惟義と申すは、怖(おそろ)しき者の末にてぞ候ひける」
と、興味を引かれることが書かれています。こんだけ人がばたばた死ぬ物語で、語り手に「怖しき者」とまで言われる存在とは一体。
豊後の国(大分県)、とある山里の女。通ってきた男の素性が気になり、男の服に針と糸をつけて跡を追いました。日向(宮崎県)との境の岩屋まで追っていくと、現れたのは十四五丈(一丈は約3m)もある大蛇。針はその大蛇の喉笛に刺さっていたのでした。
どうにか生還した女は元気な男の子を出産します。その五代の孫こそ、九州の支配者、緒方惟義。