プロップがロシアの昔話から分析したという、31の機能。
創作入門の本にはよく出てきます。私は近藤功司『それでもRPGが好き!』で読みました。以下、西田谷洋『学びのエクササイズ 文学理論』三六頁より、改行を補って孫引きします。
1家族の一人が家を留守にする。
2主人公に禁を課す。
3禁が破られる。
4敵対者が探り出そうとする。
5犠牲者に関する情報が敵対者に伝わる。
6敵対者は、犠牲者かその持ち物を手に入れようとし、犠牲者をだまそうとする。
7犠牲者はだまされ、敵対者を助ける。
8敵対者が家族のひとりに害を加える。
9被害が知らされ、主人公に頼む。
10主人公が、対抗する行動に出ることを決意する。
11主人公が家を後にする。
12主人公が試される。
13主人公が、贈与者の働きかけに反応する。
14呪具が主人公の手に入る。
15主人公は、探し求める対象のある場所へ、連れて行かれる。
16主人公と敵対者とが、直接に闘う。
17主人公に標がつけられる。
18敵対者が敗北する。
19発端の不幸・災いが解消される。
20主人公が帰路につく。
21主人公が追跡される。
22主人公は追跡から救われる。
23主人公が気づかれずに到着する。
24ニセ主人公が不当な要求をする。
25主人公に難題が課される。
26難題を解決する。
27主人公が発見・認知される。
28ニセ主人公あるいは敵対者の正体が露見する。
29主人公に新たな姿形が与えられる。
30敵対者が罰せられる。
31主人公は結婚し、即位する。
しかし、西田谷著はプロップへの異説も載せています。
「しかし、プロップが分析したテクストは、昔話の原文ではなく、物語の結末に注目してプロップが要約した書き換えだった。このとき、プロップの主張と異なり、機能の順番が違う原文もあった。また、プロップの機能連鎖は、魔法昔話のみについて大まかな妥当性を持つ程度で、他ジャンルには有効ではない。物語の終結点や過程は一つとは限らないのである」(『文学理論』三一頁)。
おおせの通りで、私が幼少時に世界文学全集で読んだ「ばかのイワン」とか「ばかのエメーリャ」というロシア民話でも、主人公の結婚後にも敵対者が何やら画策してた記憶があります。ロシア魔法昔話に限ってさえも、プロップの31機能が順番通りに進行するとは限らないのです。他のジャンルではなおさらです。