核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

矢野龍渓の「不必要」

 前回に引き続き、忘れられた明治の小説家であり平和主義者でもある矢野龍渓(やのりゅうけい)の小説を紹介します。今回のお題は「不必要」(明治40=1907年)。日露戦争終結から二年後のお話です。
 美女にも金にも、地位にも名誉にも興味のない一人の男がいます。そんな彼の唯一の関心事は「世界平和」なのです。
 「僕の言ふ平和とは根本中心の平和であると見て貰はねばならぬ、国内に向つては社会組織の改善だ、国際間に於ては世界大平和の主張だ、此れが僕の願望で、此れが僕の楽みだ」
 …ちなみに、この年の話題作は、女学生の蒲団(ふとん)にはぁはぁする中年男を描いた、田山花袋の「蒲団」でして、時代を先取りしすぎた「不必要」はまったく話題になりませんでしたw。時代に逆行するアンタルキダスは、知られざる明治のマイナー平和主義小説の復権のため、地道な努力を続けていきます。