「ヒツトラーの「我が闘争」といふ有名な本を、最近僕ははじめて室伏高信氏の訳で読んだ。
(略)
彼は、彼の所謂主観的に考へる能力のどん底まで行く。そして其処に、具体的な問題に関しては決して誤たぬ本能とも言ふべき直覚をしつかり掴んでゐる。彼の感傷性の全くない政治の技術はみな其処から発してゐる様に思はれる。
これは天才の方法である。僕はこの驚くべき独断の書を二十頁ほど読んで、もう天才のペンを感じた。
僕には、ナチズムといふものが、はつきり解つた気がした。 (以下略)」
※1~6次全集のいずれも、「彼は、彼の所謂主観的に考へる能力のどん底まで行く。そして其処に、具体的な問題に関しては決して誤たぬ本能とも言ふべき直覚をしつかり掴んでゐる。彼の感傷性の全くない政治の技術はみな其処から発してゐる様に思はれる」の一節を削除し、「天才のペン」の前に、「一種邪悪なる」を加筆。
1~6次全集および第5次全集補巻(註解 追補)のいずれにも、上記の事実についての言及なし。