核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

『木戸幸一日記』 下巻 東京大学出版会 1966 ―君、君たらざれば編―

 村井弦斎の『食道楽』は実は全文ネット上で読めるのですが、電子書籍というやつは苦手でして、読み返し終わるまでしばらく時間がかかりそうです。なので、今回は初心に帰って、核兵器および通常兵器について考えてみたいと思います。前にも紹介した木戸幸一日記から、終戦直前の御前会議についての記述を引用します。
 
 八月九日(木)晴
 (前略)十一時五十分より翌二時二十分迄、御文庫付属室にて御前会議開催せられ、聖断により外務大臣案たる皇室、天皇統治大権の確認のみを条件とし、ポツダム宣言受諾の旨決定す。
 
 八月十日(金)晴
 御前会議終了後、御召により二時三十二分より同三十八分迄、拝謁す。其際、聖断の要旨を御話あり、恐懼感激の中に拝承す。右要旨左の如し。
  本土決戦本土決戦と云ふけれど、一番大事な九十九里浜の防備も出来て居らず、又決戦師団の武装すら不充分にて、之が充実は九月中旬以後となると云ふ。飛行機の増産も思ふ様には行って居らない。いつも計画と実行は伴はない。之でどうして戦争に勝つことが出来るか。
 
 ・・・念のために書いておきますと、長崎への原子爆弾投下は8月9日午前11時、終戦のラジオ放送は8月15日です。ちなみに、木戸日記の8月9日から15日までの記事に「長崎」という地名は一回も出てきません。
 率直に感想を述べます。核兵器が戦争の抑止力たりうるとか、原子爆弾のおかげで終戦が早まったという俗説に対して、この資料は有力な反証たりうると思います。長崎の悲惨など、最高責任者はこれっぽちも気にしていなかったのですから。