核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

カフカ 「ポセイドン」(執筆年代1920ごろ) 『カフカ寓話集』池内紀編訳 岩波文庫 1998

 トライデント(三つ又のホコ)でおなじみの、海の神ポセイドン。その知られざる日常生活の物語です。
 
 海の管理者ともなると、計算の仕事が大変な量になるのですよ(本日の海難事故何件とか、マンボウの出産統計とか)。部下にやらせれば(2010年代ならエクセルとか)いいようなものですけど、本人が生まじめな性格なので、全部自分でやるわけですね。別にこの仕事が好きってわけでもないけど、海関係以外の仕事は経験ないし。
 で、年度末までにどうにか計算を終わらせて、全速力でオリンポスの上司に報告に行くわけです。地上の人間たちはそういう時しかポセイドンを目撃しないから、しょっちゅう大海原を駆けてるみたいに誤解しますけど。ポセ~イドン~は海を行け~♪。
 いいかげん海にも飽きてきたポセイドン。彼の唯一のひそやかな望みとは・・・。
 
 「これは彼の口ぐせだが、世の終末まで待つことにしているとか。そのときにはきっと、もの静かな瞬間がおとずれる。だから世の終末の直前に最後の計算を点検してから、そそくさとそこいらをぐるっとまわってみたいもの―」
 
 文庫本でたった3ページだけど、いろいろ身につまされる小品。
 ぜひ増田こうすけ画伯にまんが化してほしいものです。