核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

矢野龍渓 『経国美談』後篇 第十三回より

 「哥侖(コリンツは)平和を好むの国柄なるに因る者か数前年より其の国人中に希臘全土の大平和を謀らんとする一社を現出せり其の説く所は
  抑も人数の群居するは互いに有無を交易して快楽を享受すべき為めなるに干戈を以て相ひ残虐するは何事ぞや今日一国一邦の社会には已に法律の設ありて各人各族の間に暴力の争闘を絶ち得たるに独り邦国相互の間にては大は小を併せ強は弱を食み未だ暴力争闘の賤境を脱せざるは人類の大恥と云ふべし然れば一国社会に行はるゝの平和主義を広めて之を邦国相互の交際に及ぼし希臘全土に於て永く暴力の争を絶たん。
 (略)此の社中に於て最も有名なるは安太隆と云へる人物なるが是人は一両年前より国人に推されて哥侖共和国の政権を執るに至れり故に平和主義を実行するが為めに列国に交るには幾分の便宜を得たりけり
 (略。斯波多・阿善・斉武三国の同意により)斯く希臘全土を挙げ大小の邦国悉く同意を表しければ乃ち翌三百七十一年第一月に於て列国より各々三名の全権委員を派出し愈々全土の大平和の大会議を開くことに決し幾年の騒乱の後ち今や希臘全土の人民は将に太平無事の祥雲瑞日を見るに至らんとす」
 
 ・・・次回、「列国の英雄一堂に会す 斉使大会に旧典を争ふ」にご期待ください。