核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

アリストパネース 『平和』 (紀元前421年 上演)

 人類が持ち得た最古の平和主義文学。アリストパネースの喜劇『平和』を紹介します。引用は『ギリシア喜劇全集2』(岩波書店 2008)より。
 
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 トリュガイオス ゼウスよ、私たちの民族にいったい何をしようとしているのか。
あなたは知らぬ間に諸ポリスを空っぽにしてしまうだろう。
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 アテナイとスパルタの長きにわたる戦争を止めるため、天上の館へ旅立つアテナイ市民トリュガイオス。
 しかし神々は人間を見捨てて天蓋のさらに上方に去り、人類の未来は戦争の神ポレモスにゆだねられていました。諸ポリス(都市国家)の運命はポレモスのすりばちに投げ込まれ、後は新たなすりこぎ(主戦論者)が見つかるのを待つばかり。
 見つかった者は死刑だというゼウスの布告を無視して、トリュガイオスはとらわれた平和の女神エイレネーを救出すべく、決死の探索を開始します・・・。
 ・・・根本的に、戦争は神々ではなく人間が起こすものであり、従って人間の手で止められるはず、というのがこの作品の認識のようです。この認識は次の作品『女の平和』でさらに深められることになります。
 佐野好則氏の解説によれば、この作品が上演されたのち間もなく和平条約(ニーキアースの平和)が成立したそうです。コンテストの結果は第二位だったとはいえ、文学が戦争阻止に貢献した輝かしい一例といえるでしょう。
 ただ、古喜劇にありがちな下ネタがなあ。天にのぼる手段からして、天馬ペーガソス(ペガサス)じゃないんですよ。原語でカンタロス。ラテン名Scarabeus sacer・・・。検索は自己責任でお願いします。