核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

世の中にこんな楽しいことは―村井弦斎『釣道楽』(1905)より

 究極の幸福シリーズ第二弾。『少女の友』誌に村井弦斎関係の文献があることを知り、予習してみたところ、以下の一節を発見しました。

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 「京都の取引先からごく上等の生き人形を貰って、毎日それを眺めていたことがある。年若な娘の人形だが実によくできている、今にも口をききそうな子、私はそれを何よりの慰みにしていたよ、生きた人間よりよっぽどこの方が愛らしいと思っていた、その罪のない無邪気な正直な人形に魂があって、口をきいたらなおよかろう(と)考えたこともある。人形にたとえては失礼だけれども、浪子さんはその人形に美しい魂を入れたようなものだ、毎日顔を見たり、口をきいたり、鱗次郎さん(引用者注 浪子の婚約者であり義理の兄)について一緒に動物学を勉強したり、それが飽きたらこうやって浜へ出たり、あるときは舟に乗ったり釣りに行ったりして清い月日を送っていたら、世の中にこんな楽し(い)ことはなかろうと思うよ、私は無理にも川沼さんに願って浪子さんを拝借したい」と、その心は到底少女を離しそうもない。少女もまたその実意を感じ(以下略)
 村井弦斎 『釣道楽』(1902 引用は新人物往来社の1977年版により、近代デジタルライブラリー収録の版本によって脱字を補った)
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 田山花袋の「少女病」(1907)よりも5年前、新聞初出なら6年前。いいんでしょうか。無問題です。上の発言者も少女ですから。え、余計やばい?

 (2018・10・27追記 年代が誤っていたので直しました)