アウグスチヌスからウォルツァーに至る、「正戦論」の是非をめぐる議論の系譜を歴史的にたどった論文です。
スコラ哲学というと、「正しい戦争とは不正な者への報復である」というトマス・アクィナスが有名なのですが、それに反対していたスコラ哲学者もいる、というのは意外でした。
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十字軍時代に異教徒への「聖戦」を当然視する風潮が一時期風靡したが、スペインの近世スコラ哲学者(ビトリア、ヴァスケス、モリナ、スアレス)によって否定された。彼らは異教徒の支配権・所有権を認めたインノケンティウス4世を支持し、宗教の相違のみを理由とした戦争の正当化に反対した。次いで人文主義者の登場によって、異教徒への「聖戦論」は完全に斥けられた。
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