核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

星一『三十年後』 その1 内乱と非暴力的鎮圧策

 SF作家星新一の父上の著とされる、1918(大正7)年刊行の未来小説『三十年後』。実は全巻通読はしていないのですが、さわりの部分だけ紹介します。
 「世界の平和以来、武器の必要を認めないので、各国共に兵器は潰して了ひました」という時代。医薬の進歩で寿命が延びたものの、長すぎる人生に飽きた者たちが日光の山中にこもって内乱を起こす事件が発生します。
 骨董品の兵器を集めて討伐するにしても、逆に喜んで弾丸に当りにきかねない。政府は睡眠瓦斯弾(すいみんがすだん)を投下する案も出しましたが、そんな事をしたら日光を焼き払うと反乱側は言い出します。
 そこで主人公の嶋浦翁が説得に行くのですが、内乱側も実は命が惜しかったことが判明。洋の東西を問わず、「衝突争闘を生じるのは、皆下らないイキハリから始まつた」ものだと主人公はあきれ、どうにか談判をまとめます。
 (近代デジタルライブラリー『三十年後』 128~132/138)
 「イキハリ」は、「意気張り」でしょうか。星新一の『ほら男爵 現代の冒険』あたりを思わせるとぼけたやりとりですが、内容はけっこう深刻です。空想の中でさえ、軍備の廃絶を説得力をもって描くことは容易ではないという一例。