核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

ケインズ著  塩野谷祐一訳 『雇用・利子および貨幣の一般理論(ケインズ全集第7巻)』 東洋経済新報社 1983

 近代経済学の古典に手を出してみましたが、目指す不換紙幣論は見つかりませんでした。代わりに平和論を。

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  私は先に付随的にではあるが、新しい体制は古い体制に比べて平和にとっていっそう望ましいものであろうと述べた。この点はもう一度繰り返し、強調する価値をもっている。
 戦争にはいくつかの原因がある。独裁者やそれに類する人々にとっては、戦争は少なくとも彼らの期待では痛快な興奮を与えるものであって、彼らは自国民の先天的な好戦性に訴えるのが簡単であることを知っている。しかし、これにもまさって、国民の激情を煽る彼らの仕事を容易にするものは、戦争の経済的原因、すなわち人口の圧迫と市場獲得競争である。ここでの議論に密接な関係をもつのは第二の要因であって、それは一九世紀においておそらく支配的な役割を演じたものであり、また今後再び支配的な役割を演ずるかもしれない。
 (382ページ)
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 原著が刊行されたのは1936年2月。第二次世界大戦の3年前。未来の国際貿易が「相互利益の条件のもとで喜んで行われる財貨およびサービスの自由な交換となるであろう」(383ページ)という、ケインズの楽観的な予言は「夢のような希望」(同)で終わりました。