核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

吉野作造の「小さな王国」論

 『中央公論』1918(大正7)年10月号93ページ。「小さな王国」を語る上で欠かせない文献です。

   ※
 谷崎潤一郎氏の『小さな王国』は我国現代の社会問題に関し頗る暗示に富む作物である。小学生の単純な頭脳から割り出された共産主義的小生活組織の巧みに運用せらるゝ事や、前途有望を以て自らも許し人も許して居つた青年教育家の生活の圧迫に苦しめる結果、不知不識共産的団体の中に入つて行く経過は、一点の無理がなくすら(踊り字)と説き示されて居る。作者の覘ひ所は何れにあるにせよ、我々は之によつて現代人が何となく共産主義的空想に耽つて一種の快感を覚ゆるの事実を看過する事は出来ない。而して少しく深く世相を透観する者にとつて、今や社会主義とか共産主義とかいふ事は、理論でない、一個の厳然たる事実である。
   ※

 以上、『資本論入門』29ページより孫引き。『中央公論』はいずれ現物を見るつもりなので、表記の誤り等がありましたらその時に改めます。

 (2018・8・29追記 上記の引用には、最後の一行が欠けていました。詳細は本日の記事)