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だから、谷崎の『小さな王国』の紙片は、生産を土台にした社会関係をもたない遊びごとで、紙片に書かれた数字は、要するに数字であるだけで、価値尺度の機能をもつことはできない。貨幣の価値尺度としての機能は、つねに、生産が土台になければならない。生産、すなわち人間労働によって生み出されることのないもの、いいかえると、それ自身価値をもたない物が、価値尺度になることはできない。『小さな王国』では、親のものを盗み出すのであって、この王国自体には生産はない。
時々、今日でもわが国で物々交換について語られることがある。子供たちのままごとで、花子のおひなさまと、秀子の西洋人形とが、二人の話合いで「交換」されることがある。これはまさに物々交換であるが、しかし、これは社会関係を規制する社会的交換ではない。二人の女の子のきまぐれである。
(170~171ページ)
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……ついに「ままごと」にされてしまいました。次は近代経済学系を読んでみます。