核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

メンガーの「商品の販売可能度」という概念

 メンガー貨幣論で最重要なのは、「商品の販売可能度」とその差異の発見でした。「ポテトチップスは100円で買えますが、ポテトチップスで100円は買えません」という、あの機微ですね。

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 こうした「財の販売可能度」あるいは「商品間に存在する販売可能度の差異」という概念は、まさにメンガーの貨幣理論における「アルキメデスの点」、つまり彼の貨幣理論体系の要(支点)となるアイデアであり、その貨幣起源論にとっては不可欠の概念となっている。
 (略)
 「商品の販売可能度の差異」に応じて人々が試行錯誤的に間接交換を繰り返し、最終的にみずからの必要とする財を獲得するに至るというプロセスには、まさにメンガーの貨幣理論におけるダイナミズムが集約的に表現されている。
 上述のように、販売可能度の大きい財と小さい財の交換は、それぞれの財を保有する経済主体にとって利益があるからこそ実行される。
 古川顕「貨幣の起源と物々交換(2)―ロー、マルクスメンガー―」(『経済論叢』二〇一七年八月 五~六ページ)
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 最後の一行にちょっと付け加えると、「販売可能度は大きいけど使用価値の小さい財」と、「販売可能度は小さいけど使用価値の大きい財」の交換なら、お互いにとって利益になるわけです。
 「わらしべ長者」のたとえでいうと、ハエをつないだわらしべは販売可能度は小さいけど、子供にとっては使用価値の大きい財であり、販売可能度の大きいみかんとの交換に値するわけです。これでいいのかな。
 「小さな王国」の貝島先生が内藤洋酒店で沼倉札を出してしまったように、財の販売可能度を見誤るケースもあるわけですが……。