核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

坂野潤治『明治デモクラシー』(岩波新書 二〇〇五)

 明治と大正、政治と経済をいったりきたりの日々です。今回は明治の政治で。
 矢野龍渓関係を重点的に探し読みしたら、一か所見つかりました。かっこ内は原文通り。

    ※
 福沢の高弟で太政官権大書記官(現在の内閣官房副長官あたりか)の矢野文雄が起草した、大隈参議の憲法意見(三月末に左大臣に提出されたもの)は、二年前の福沢の『民情一新』と同趣旨のもので、大隈がその内容の意味するところを十分に理解していたとは思えないほど、急進的なものであった。
 (六七ページ)
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 ……同書では矢野はあくまでも「福沢の高弟」扱いであり、独自の思想家としては扱われていません。
 『民情一新』と大隈意見書、私なりの関心に基づいて読み比べる必要がありそうです。
 もうちょい引用。

   ※
 福沢の高弟が起草しただけあって、大隈意見書は、政党内閣制の提唱にとどまらず、政権交代の必要性をも強調したものであった。憲法も議会もまだない時点で、内閣不信任の場合に、退陣するか議会解散天皇に奏上するかの選択について論じ、どちらかと言えば前者を常道とし、後者の方は「濫用を慎むべし」と主張しているのである。
 (六九~七〇ページ)
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 坂野氏もその先進性を賞賛しています。

 追記 下記のサイトで、大隈意見書とその現代語訳が読めました。
    (2021・12・2追記 リンク切れでした)