大塚英志『サブカルチャー反戦論』(角川書店 2001(平成13)年)より。
改憲・保守派(大塚氏は「好戦派」と呼んでいます)に比べて、反戦派はことばとロジックが不足しているという指摘。
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テロの直後、ぼくは仕事場近くのマクドナルドでいかにもギャルといった感じの女の子が「戦争になったら恐いよね」とひそひそ声で話すのを聞いて少し驚いた。TVの街頭インタビューでも戦争への加担を危惧する人たちは少なからずいる。
だが、この実感を上手く彼らは言語化できない。(略)彼らの「戦争への脅え」を一つの政治的な主張へと積み上げていくことばというものが全く提案されていないのだ。その責任の一端は確実に「物書き」にある。
(136~137ページ)
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……タレントやワイドショーのコメントを見ても、改憲・保守派と反戦派では言語技術の水準が明らかに違うとも述べています。
20年近く前の論ですが、反戦派のロジック不足という問題は解決をみないままです。「戦争はよくない」にとどまらず、「どうすれば戦争を止められるか」にまで深め、改憲・保守派と対話で渡り合える技術が必要なのです。
物書きのはしくれとして一案を述べると、「太平洋戦争モデル」以外の戦争のモデルを学ぶ必要があると思うのです。日清戦争・日露戦争・第一次世界大戦といった、過去の日本の戦争がいかにして起きたか、それに対して平和主義者はいかなる言葉で立ち向かったかを学ぶこと。今回書いている論文がその一助になればと思います。