核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

筒井康隆『朝のガスパール』(『朝日新聞』連載 一九九一)

 ヒット曲に便乗して『パプリカ』紹介も考えたのですが、本が手元になくて。『パプリカ』と同時期に連載された『朝のガスパール』の雑感を。

 読者からの投稿、パソコン通信(インターネットの前身ですね)からの書き込みによって、新聞連載小説の筋が変化するというふれこみの読者参加型小説。残念ながら我が家は連載当時別の新聞をとっており、祭りに乗りそびれました。今でも後悔しています。

 異星で謎の生命体と戦う「遊撃隊」の物語、と思いきやそれはパソコン通信を利用したゲームで、そのゲームに興じる上流社会のパーティに場面は移ります。と思いきやそのパーティ場面を書いている作家櫟沢と、読者からのお便りコーナーに。以下、遊撃隊編・パーティ編・お便り編という三つの物語が交互に展開されていきます。やがて三つのレベルを隔てる壁に異変が。

 新潮文庫版の解説でもふれられているのですが、『電脳筒井線』という、パソコン通信側のやりとりを収録した副読本もありまして。絶版のようですが、私は図書館でちらっと読んだことがあります。アスキーアートで「核爆弾!」とかやるやつがいて、いつの世にも「荒らし」はいたんだなと感じさせます。

 単行本版には真鍋博によるさし絵がついていて、人物関係図の回もあったわけですが、文庫本ではすべてはぶかれたのは残念です、何しろ小説三本分のボリュームなので。

 なお、遊撃隊が遊撃してる惑星はクォール(『虚航船団』の舞台)なんだそうで。地球から三十光年しか離れてなかったのかクォール。