核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

『佳人之奇遇』中の、アフリカ西岸の自由共和国

 現在のリベリア共和国は世界最貧国の一つに数えられているそうですが(ウィキペディアより)、元をただせばアメリカ合衆国の解放奴隷によって建国された国であり、アフリカの希望の星みたいに語られた時期もあったのです。

 以下、『佳人之奇遇』にみる、東海散士が立ち寄った自由国(リベリア)の実情。

 

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 自由国は、亜非利加大陸唯一の新立自由共和国たり、蛮夷の群中に介立し、独り能く文明の光輝を放つと称す。

 春陽堂『明治大正文学全集 第一巻』 一六〇頁

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 「称す」でして。東海散士が見たのは、西洋人の跋扈跳梁でした。

 黒人の「総代」とも会見したのですが、先住民の襲撃、貧しい地味、英国の干渉など問題山積み。「噫皮相の欧化は其れ国を誤るの原乎」(一六二頁)と東海散士は嘆きます。

 自由・民政・共和で国が治まるとは限らない、というお話しでした。

 その後に語られる馬島(マダガスカル)の、異常にくわしい興亡史も興味深いのですが(私は『浮城物語』論の時にマダガスカル史をかじったことがあるのです)、またいずれ。日本人がアフリカを一方的に野蛮視していなかった一例です。