核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

湯川秀樹の自由観ー『思考と観測』(アカデメイア・プレス 一九四八)よりー

 人間が自由と呼んでいるものは何か。湯川著六一頁より要約しますと、19世紀と20世紀では根本的に違うそうです。

 19世紀では物質世界が個別的因果律によって厳格に統制されており、自由は全く主観的な気持としてしか存在し得なかった。しかし20世紀では、

 

 「必然と自由との間の”偶然”という新しい通路がおぼろげながら認められるのである」(同著六一頁)

 

 すべてが必然的に決定されているとする19世紀的世界像では、自由意志は実現しようがない、というのはわかります。しかし20世紀的世界像のほうは、まだぴんときません。以前に湯川著『目に見えないもの』収録「精神と物質」でも論じたことがあるとのこと。探してみます。

 ・・・・・・検索したら、「物質と精神」という章でした。読んでみたけど、物理学の最先端(昭和一八年三月と付記があります)をもってしても、物質と精神の関係はよくわからないそうです。小林秀雄が必勝の精神を叫んでいた戦時下の文章としては、良心的なものなのではないでしょうか。