原抱一庵『闇中政治家』の一節。
「齢尚ほ二八に満たず婦人にしても見まほしき婀娜(あだ)たる一美少年」
美少年なのに二十八歳未満というのは不自然だと考えたのか、あるご論文ではここを
「齢尚ほ一八に満たず」(以下略)
と修正して引用していますが、ここは「二八」で合っています。
「にじゅうはち」ではなく、「にはち」。2×8=16。
「年の頃二八」という表現を、たしか『水滸伝』で読んで覚えました。
なおこの箇所で、北海道を気ままにさすらっていた語り手は、この美少年について北に行くか、もとからの怪しい二人組について南に行くかの二択を迫られます。
「獲物は今は俄(にわ)かに二ツとなれり、一は北に向て赴かんとし一は南を指して行かんとすアゝ余は孰(いず)れに附随してアサルべき歟(か)」
なんかゲームブックみたいな選択肢です。それこそ『水滸伝』みたいに視点人物がいっぱいいれば、両方のルートを楽しめたのですが・・・・・・。