核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎『深山の美人』あらすじ

 『都新聞』一八九三(明治二六)年一一月一一日~一二月二九日連載。

 時は明治二〇年代。丹澤山の奥深く。洋服姿の明治の紳士、今野小才治は、立派な猟銃に猟犬を連れて山中にわけ入ります。外見は立派でも銃の腕は悪い今野は、狙った鹿に逃げられます。すると一本の矢が鹿を射止めます。見ると木の上で、破れた和服姿の美女が、弓矢を携えているのでした。

 下心ありありで、鹿をかつぎ去った彼女を追う今野。彼女の家は奥山家という元幕臣で、明治新政府に支配された江戸で暮らすのを潔しとせず、二十数年前にこの山に一家でこもったのでした。あぶった鹿をごちそうになりながら、自分が明治政府の役人であることはぼかして話を合わせた今野は、さっきの山育ちの娘、綾羽を東京に連れて行き、天皇陛下ご親政のお江戸を見せてあげると持ちかけます。

 明治風に「お花」という新たな名前を名乗らされ、見る物すべて珍しい東京に来た綾羽。今野には芸者あがりの正妻がいるのですが、お花を妾(めかけ。第二夫人)にしようと企んでいました。山育ちでも教養豊かで聡明なお花に見破られ、妻からも責められて今野は窮地に立ちます。

 そこに訪れた二人の友人。洋服姿の軽井口之助はお花の美貌と古風さに驚くばかりですが、和服姿の法律家、道尾亨は彼女に見覚えを感じます。実は道尾の母の姉妹が奥山夫人、つまり道尾とお花はいとこ同士なのでした。

 三人の男たちからそれぞれに求愛され、今野の妻からは嫉妬されてお花の立場は揺れ動き、丹澤山に戻ったりもしますが、妻に旧悪をばらされたことで今野は役人をくびになってしまい、今野家から解放されたお花が道尾と結婚するところでめでたしめでたしなのでした。

 感想は後日。