核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

ゲーテの原植物論と、シラーの反論

 ゲーテという人は文学以外に、畑違いの研究もいろいろやってまして。一例をコトバンク様の「原植物」の項より引用。

 

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 原植物
 げんしょくぶつ
 Urpflanze

植物の原型の意。ゲーテが,あらゆる植物が由来してきた起源的存在として想定したもの (1740) 。一時は彼は原植物の実在を考えて,イタリア旅行の際にこれを捜そうと試みたりしたが,本質的にはむしろ観念的なものである。したがって原植物から特殊化した各植物形態への仮想の変化によって,ゲーテを進化論者と考えることには,多くの研究者は否定的である。

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 すべての植物の源となる原植物。なんかそそられるアイディアです。

 引用文中にもあるように、ゲーテは現実世界にそれが現存すると信じており(従って、進化論とは違います)、初対面のシラーにそのスケッチを見せたわけです。当時カント哲学の研究に凝っていたシラーは言いました。

 

 「それは『経験』ではありません。『理念』です」

 

 むずかしい言い回しですが、要は「脳内植物乙」なのでしょう。ゲーテもちょっと機嫌を損ねましたが、これが両文豪の終生に及ぶ親交のきっかけとなったそうです。

 現代植物学からは一笑にふされそうな論ではありますが、ダーウィン進化論以前のトンデモ植物学として捨て去ってしまうのも惜しいと思います。なんか再利用したいものです原植物。RPGのラスボスにするとか……。

 なおゲーテは色彩論も書いており、白色光こそすべての色の源みたいな論ですが、これは明確に否定されています。白色だけですべての色が出せるなら、プリンタの不調でこんなに苦労はしません。