アンタルキダス作 タヌキになったキツネ
キツネの森に、とても大食いのキツネがいました。いつも食べてばかりいたので、とてもキツネには見えないほどふとっていました。
「けしからん。キツネの風上にもおけんやつだ」
「あいつをこのままにしておいたら、わしらの食べるものがなくなってしまう」
というような声が、森のキツネたちの間で高まりました。居心地の悪くなったでぶギツネは、ありったけの果物と木の実をかかえて、あてのない旅にでました。
てくてくと歩いていくと、前方にタヌキの森が見えます。でぶギツネは目のまわりにどろをぬって、のこのこと入っていきました。
「はじめまして。ぼくは通りすがりのタヌキです」
「おお、遠いところをよくきなすった。ゆっくりしていきなされ」
森のタヌキたちのだれ一人として、こいつはもしやキツネでは、などとうたがうものはありませんでした。それほど、でぶギツネはふとっていたのです。タヌキの森に腰をすえたでぶギツネは、あいかわらず食べてばかりの日々を続け、とうとうタヌキにさえ見えないほどふとってしまいました。
「けしからん。タヌキの風上にもおけんやつだ」
「あいつをこのままにしておいたら、わしらの食べるものがなくなってしまう」
というような声が、森のタヌキたちの間で高まりました。居心地の悪くなったでぶギツネは、ありったけの果物と木の実をかかえて、あてのない旅にでました。
その後、聞くところによると、ブタの森に最近ひっこしてきたというふとったブタは、どことなくあのキツネに似ていたということです……。
教訓。朱に交われば赤くなる。青は藍より青し。