アンタルキダス作 「まねきネコとねむりネコ」
ある日のこと、まねきネコとねむりネコが話しあいました。
「どうだい、ふたりで商売をはじめないか」
「いいね。もうけは山分けにしよう」
こうして二匹のネコはお金を出しあって、大通りに小さな店を開きました。まねきネコは客寄せにかけては天才的な腕があったので、店はたちまち大はんじょうしました。
もうけがふえるにつれ、まねきネコはねむりネコがうとましくなってきました。
なにしろ、どんなにいそがしい時でも、ねむりネコはねむってばかりいて、すこしも仕事を手伝おうとしないのです。
「あのなあ、ねむりネコ。働かないんだったら出ていってくれないか」
「そうかなあ、まねきネコ。ぼくだって働いているつもりなんだがなあ」
まねきネコはもはや何も言わずに、売り上げの半分をねむりネコに渡すと、いつもの手首の動きを逆にして、ねむりネコを追い出しました。ねむりネコは半分ねむったような目つきのまま、とぼとぼと店を出ていきました。
その様子を見てよろこんだのは、近所に住むどろぼうネコです。その夜にさっそく店に忍び込み、働きつかれておおいびきでねむっているまねきネコから、おなかにくくりつけてあったお金をすべてぬすんでいきました。
翌朝。まねきネコはあまりのことにぼうぜんとしていましたが、やがてはたと気がつきました。
「そうか。今までどろぼうが入らなかったのは、ねむりネコのおかげだったんだな。いつも一晩中起きてそうじや見張りをしていたから、あんなにねむそうだったんだ。ああ。あいつを追い出すんじゃなかった」
教訓。生活サイクルの違いは不和のもと。