核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2011年7月3日 日本文学協会発表要旨 於名古屋大学

 表題の通り、久しぶりの研究発表をやることになりました。
 『日本文学』六月号をお持ちでないかたのために、発表概要をお知らせしておきます。
 
発表題目 小林秀雄における「天才」の問題―ヒットラー観の変遷を中心に
要旨(400字)
 
 1940年9月12日の『朝日新聞』に掲載した「“我が闘争”」をはじめとして、戦前・戦時下の小林秀雄ヒットラーを「決して誤たぬ」「天才」「小英雄」と評価していた。が、戦後の全集では該当文を「邪悪なる天才」と改訂し、さらに随筆「ヒットラアと悪魔」ではヒットラーを全否定するに至った。六次に及ぶ小林秀雄全集の刊行にも関わらず、初出との校合が進んでいないこともあり、この事実は知られているとは言いがたい。
 本発表は、小林秀雄におけるヒットラー観の変遷を、時局への迎合といった問題に矮小化することはせず、「様々なる意匠」から「本居宣長」に至る全文業に共通する欠陥の露呈であると見る。一言で言うならば、「天才」「贋物」の二分法による批評の限界である。
 アウシュビッツの後で文学研究を書くことは野蛮であるか。本発表は小林秀雄論にとどまらず、学問としての文学研究の進むべき道について考察していくことを目的とする。