小ネタを一つ紹介して、『リヴァイアサン』を終わりにします。
第1部第十二章「宗教について」。異教徒の神官や巫女の予言は、「できごとが二様にとれるようにわざとあいまいにされていたり」「人を酔わせる蒸気によって、つじつまの合わないものにされていた」、怪しいものだと述べた上で、以下のように続けます。
文中の*は訳注を示す記号、〔〕内は水田洋氏の訳注です。
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それは、ノートルダム*の予言に似ているようである。というのは、現在残っている諸断片は、のちの時代に案出されたように思われるからである
(中略。星占いや鳥占いや観相術などの例をあげた後)
このように人びとは、かれらが信用している者からでたことをなんでも容易に信じさせられるのであり、愛想のよさと巧妙さとによって、かれらの恐怖と無知とをとらえることができるのである。
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民主主義でも平和主義でもなかったホッブズですけど、少なくとも合理主義者ではあったと思うのです。まったく、予言なんかよりも、心配すべきことはいくらでもあるのです。