核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎「里親」(『婦人世界』1914(大正3)年1月号)

 『小説 子宝 後編』と同じ号に掲載された読み切り短編です。『子宝』に続き、養子(厳密には里子)の葛藤がテーマです。
 例によってあらすじを兼ねた登場人物紹介を。
 
 白石勘作 妻に先立たれ、子供を里子に出した。後に米国で成功し寛太を引き取りに来る。
 その妻   日系二世。勘作の後妻となり共に来日。
 猪俣清次 寛太の里親。妻とともに「寛太を絶愛してゐる」ため、勘作に返すのを拒絶する。
 寛太    清次に育てられた勘作の子。「今の里親に孝行するのが親孝行であらうか、それとも自分を生んで呉れたといふ真実のおとつさんに孝行するのが親孝行であらうかと、小さい心が迷ひ出」すが、最後は涙ながらに実父夫婦に引き取られていく。
 
 養家に留まる選択をする『釣道楽』とは対照的な結末です。一話読み切りで終わらせるには惜しい設定です。