核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎『日の出島』「朝日の巻」 その1 進化論

 博士論文の第五章でも引用しました、人類の未来を雲岳女史と愉快な仲間たちが大胆に予測する一節。ようやくここまでたどりつきました。今回は新聞連載版より引用。
 
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「僕は何うかして人間の身体に羽の生へる工風がして見度いのです。尤も西洋ではヤレ風船の改良とか、ヤレ空中飛行器の発明とか、爾 ( さ )う云ふ工風をするものがあるけれど到底完全の物の出来る筈が無い(略)鳥でも人間でも同じ動物だ、根源に遡れば矢張り単細胞から進化したのだ(略)鳥ですら必要に迫まられて飛ぶと云ふことを工風したのだから ( いはん )高等動物の人間が自分の身体へ羽を生し得んと云ふ事はありますまい」
   「人の羽翼」『日の出嶋 朝日の巻』 『報知新聞』 一九〇一年一月三日
 
  「僕は人間をして水陸両棲の動物たらしめ度いと思ふのです。他の下等動物ですらコロコダイルとか亀とか水陸両棲の者は沢山あるのに人間が陸地の外に棲めぬとは怪しからん」(略)
   「 ( せふ )の望む所は、地球の如き小天地に跼蹐 ( きょくせき )するを好まず、太陽系中の諸星を一団となし、宇宙の間を縦横に横行せん(略)妾は千百の太陽系を一団となし、他の宇宙あらば随て之を征服せん」
   「魚類の王」『日の出嶋 朝日の巻』 一九〇一年一月四日
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 …論文中には清国に向かう途中の船内であるかのように書いてしまいましたが、正しくは帰国の船中でした。訂正してお詫びします。