核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

江見水蔭「探検小説 海底の新戦場」(『少年倶楽部』1918(大正7)年1月 世界探検号)

 『三十年後』の直前に江見水蔭が発表した、『少年倶楽部』の探検小説。

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 驚いたのは主人である。
 『誰だツ。如何して君は入つて来たかツ』
 面会謝絶で研究室に立籠もつて、家族の者にも滅多に入るを許さないで居る、其所へ怪人が突然入来つたからである。
 (2ページ)
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 のっけから星新一の、博士と泥棒シリーズっぽい出だしです。後の展開も。

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 『や、先生、私はこんな事なんか何でも有りません。モツト乱暴な事を沢山して居ります実は馬賊の大将なんです』
 『馬賊の大将?』
 『今度それが海賊の大将に成りましたので』
 『馬賊から海賊に成つた』
 『でも、ご安心なさい。私は普通の賊とは違つて、一個人の財宝は奪ひません』
 (3ページ)
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 ご安心なさいもないもんです。
 なぜか意気投合した博士と怪人はドイツから奪った潜水艦に乗り込み、数々の冒険を重ねます。最後は海底に眠る金塊の処置をめぐって、引き揚げて海軍増強のたしにしようとする怪人に、そんないやしい事には反対だと博士は艦を降り、再び研究室に戻ることになるという結末です。
 とはいえ博士も平和主義者ではなく、目の前の金塊よりも、ドイツ海軍の全滅を優先しなければならないという主義です。なんか煮え切らない結論ですが、『三十年後』との思想の違いは感じました。、