核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

塩野七生『ギリシア人の物語Ⅱ 民主政の成熟と崩壊』(新潮社 二〇一七) その1

 成熟の人ペリクレスと、崩壊の人アルキビアデスを扱った第二巻。今回はそのどちらでもなく、アリストファーネス(塩野著ではこの表記)の喜劇『平和』の扱いについて。

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 この「平和」(引用者注 ニキアスがスパルタと結んだ平和条約)を酷評したアテネの知識人は、ツキディデス一人ではなかった。
 アリストファーネスも、「ニキアスの平和」の直後に発表した、皮肉をこめて(略)(平和)と名づけた作品で、ものの見事に笑いのめしている。
 (二二三~二二四ページ)
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 はたして喜劇『平和』発表は条約の「直後」なのか。『ギリシア喜劇全集2』(岩波書店 二〇〇八)の『平和』解説にはこうあります。

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 この和平条約(「ニーキアースの平和」は、本作品が上演された前四二一年の大ディオニューシア祭ののち間もなく成立した(トゥーキューディデース『歴史』五・二〇)。
 つまり本作品は、前四二二年のアンピポリスの戦い以後、和平条約締結へ向けての交渉が進展してゆく状況下で執筆されたのである。平和について、まだ障害があるものの、近いうちに実現するという期待が高まる時代背景を色濃く反映した作品であるということができる。
 佐野好則「『平和』解説」 三五九ページ
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 と、塩野著とは逆のことが書かれています。はたして、

 1、『平和』上演は平和条約の前か後か
 2、『平和』のテーマは条約賛成か反対か

 私が『平和』を読む限り、やがて来るであろう平和をことほぐ作品にしか読めないわけですが……ツキジデス五・二〇を読んでから結論をくだすことにします。