核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

『赤と黒』の勲章論

 芥川龍之介の「将軍」の一節。

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 それは彼の頭には、一時愛読したスタンダアルの言葉が、絶えず漂って来るからだった。
「私は勲章に埋まった人間を見ると、あれだけの勲章を手に入れるには、どのくらい××な事ばかりしたか、それが気になって仕方がない。……」
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 私がスタンダールを読んでみたのは、この出典が見つかれば、「××」の部分も確定できると思ったからでした。
 で、見つかったのが『赤と黒』の以下の箇所。「供∥莇緇蓮”馥Р顱廖

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 「百年前なら金羊毛勲章もあきらかな栄誉だった。だからその頃ならあんな男なんか到底もらえなかったでしょう。今日名門の人間であんなものに有頂天になっちまうのはまずダラチェリ一人ぐらいのものでしょうな。あいつらならそれが欲しさに一つの町全体を縊り殺すことだってやりかねませんからね」
 スタンダール赤と黒』大久保和郎訳 角川文庫 一九七一 四二一ページ
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 長すぎる気もしますが、大意は芥川の引用と同じだと思います。
 「××」にぴったりする言葉はありませんが、おそらく「殺伐」とか「残忍」に類する言葉が入っていたのでしょう。