核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

福沢諭吉『通俗国権論』「外戦やむを得ざること」

 福沢諭吉よりもっとひどい国粋主義者や侵略主義者もいまして、福沢はむしろ穏健な部類でした。
 しかし、「侵略主義者としては穏健な部類」だからといって、平和主義者にはならないことは確かです。

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 一国の人心を興起して全体を感動せしむるの方便は外戦に若くものなし。(略)今日に至りても世上に征韓の論あるは、日本の人民が百千年の古を思い出してその栄辱を忘れざるの証なり。(略)これ(引用者注 朝鮮以外の諸外国)をこれ捨ててとくに朝鮮征伐の論を唱え、全国の人民もこの論を聞けば、たとい征伐の念なき者にても、朝鮮と日本の区別をばよく了解するはなんぞや。戦争の人心を感動して永年に持続するの力は強大なるものと言うべし。ゆえに今西洋の諸国と対立して、わが人民の報国心を振起せんとするの術は、これと兵を交うるに若くはなし。
 福沢諭吉『通俗国権論』一八七九(明治一二)年 中央公論社『日本の名著33 福沢諭吉』 一九六九 四一九ページ
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 報国心(愛国心)を盛り上げるためには戦争が必要なんだそうです。これで福沢はアジア侵略主義者じゃなかったなんて言われても、私には信じられません。