夏休みの読書感想文でも。原本は今手元にないので、
ウィキペディアのあらすじを観ながら記憶を呼び戻してみます。初出は『
SFマガジン』1968年9月号とのこと。
近未来、白い服の思想警察が、市民のプライバシーのすべてを監視する社会。といっても殺人や強盗のような軽犯罪は白服の管轄ではありません。白服の取締り対象は一つ、戦争に関する言動のみ。
戦争、略して「セ」という概念はそもそも存在しなかったことになっており、それに関する文書(
反戦を訴える文学作品も含む)や事物はすべて抹消されることになります。戦争
ごっこで遊ぼうとした子供でさえも。
白い服の男本人は、こうした時代に何の疑問を抱かないどころか、戦争についての言論を野放しにしていた過去のやつらを憎悪しています。そんなことだから、
第三次世界大戦を起こすはめになったのだと。
「戦争の記憶は語り継がれねばならない」という戦後的思想に対する、強烈な反論です。
平和
ファシズムとしか言いようのない時代ですが、作者自身はエッセイで、「他に戦争をなくす方法があるのか」という趣旨を書いており、読者を悩ませるところです。
私としては、
星新一の言に反してでも、「
白い服の男」のような
思想統制による平和には賛成できません。他の戦争をなくす手段を、探していきたいと思います。