代表作の『進化論講話』や「猿の群れから共和国まで」こそないものの、明治の生物学者丘浅次郎の著作はけっこう青空文庫で読めまして。「戦争と平和」をはじめ何本か読んでみたのですが。
何でしょう、この丘浅次郎というイキモノの、人文科学音痴っぷりは。一々引用はしませんが、要は生物界では競争が当然だから戦争は当然だ、平和は戦争の幕間にすぎないといった、戦争遂行に都合のいい言説が延々と続きまして。
よくいえばシュミット的、悪くいえば安っぽいRPGに出て来るラスボス的な、人間はしょせん動物にすぎない史観にどっぷりと浸かり、それへの疑いはみじんも見られません。いくらホヤが専門とはいえ、これほどまでに自分自身を疑わない生き物が、教育界のトップに立っていたという事実は戦慄ものです。
昭和天皇への思想的影響(無思想もまた思想です)が気になるところですが、その点については『天皇制と進化論』という本を読んでから論じることにします。