核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

ラヴクラフト「時間からの影」

 一九〇八年、ピーズリー教授は不意に意識を失います。回復したのは五年後の一九一三年。しかし彼が知ったのは、その五年間の間、まったく記憶にない怪しい言動を、彼がとっていたという事実でした。はたして五年の間彼を動かしていたのは.……。

 

 (以下ネタバレ)

 

 ……数億年前の地球に棲み、「精神投射」で未来の生物と入れ替わることのできる、円錐型のエイリアン。その円錐型のボディさえ彼ら本来のものではないそうですが、とにかくその生物が、五年間ピーズリー教授の身体を乗っ取ってたわけです。

 ということは、ピーズリー教授の精神のほうは円錐形ボディの中にいたわけで。記憶は消されたらしいとはいえ、夢の中で教授は徐々に、円錐体として異様な都市に住んでいた頃を思い出していきます。円錐さんたちはラヴクラフトの生物にしては親切で、他の時代から乗っ取られてきた人間その他との交流を許したり、二〇世紀の記録を残すのを許してくれます。

 全部夢だったと思いたいところですが、オーストラリアの古代遺跡から、人類誕生前のものと思われる文書が発見されます。その文字は……筆跡は……。

 

 恐怖よりも、アイディアの奇抜さが光る作品です。この生物、クトゥルフTRPGにも「イスの偉大なる種族」としてデータが載ってまして。遭遇者の記憶を消しそこねるあたり、「タイムパトロールぼん」的なマヌケさがあります。